みどころ

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ルネ・マグリット(1898-1967)は、ベルギーの国民的画家であり、20世紀美術を代表する芸術家。言葉やイメージ、時間や重力といった、私たちの思考や行動を規定する“枠”を飛び超えてみせる独特の芸術世界は、その後のアートやデザインにも大きな影響を与え、日本でも高い人気を誇ります。日本におけるマグリットの展覧会は、1970年代以降何度か開かれてきましたが、本格的な回顧展は2002年以来、実に13年ぶりとなります(東京では13年ぶり、京都では44年ぶり)。

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ベルギー王立美術館、マグリット財団の全面的な協力を得て、世界10か国以上から代表作約130点が集まる本展に、どうぞご期待ください。

みどころ

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20世紀美術の巨匠・マグリット、日本では13年ぶりとなる大回顧展。

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2009年、「マグリット美術館」がブリュッセルにオープン。マグリット研究の拠点ともいえる同館の全面的な協力を得て実現する、日本で初めての展覧会です。

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世界各地の美術館・コレクションから約130作品が勢揃い。初期から晩年まで、マグリット芸術の変遷と魅力をたっぷりと紹介します。

ルネ・マグリットとは

ルネ・マグリット(1898‐1967)は、ベルギーの国民的画家であり、20世紀美術を代表する芸術家。シュルレアリスムの巨匠として知られていますが、その枠にはとどまらず、独自の芸術世界を作り上げました。マグリットの作品は、言葉やイメージ、時間や重力といった、私たちの思考や行動を規定する要素が何の説明もなく取り払われており、一度見たら忘れられない魅力に満ちています。詩的で神秘的、静謐な中にも不穏でセンセーショナルな部分が潜む――イメージの魔術師が生み出す、不思議な“マグリット・ワールド”に、どうぞご期待ください。

1898年

ベルギー、エノー州レシーヌに、3人兄弟の長男として生まれる。

1912年

14歳

母親が川に身を投げ自殺。

1913年

15歳

後の妻となるジョルジェット・ベルジェと出会う。

1916年

18歳

ブリュッセルの美術学校に入学(~1918)。

1920年

22歳

ジョルジェットと偶然再会する。
兵役につく(~1921)。

1921年

23歳

壁紙工場でデザイナーとして働く。

1922年

24歳

ジョルジェットと結婚。

1923年

25歳

ジョルジョ・デ・キリコ《愛の歌》(1914)の複製を目にし、感銘を受ける。

1924年

26歳

壁紙工場を辞め、ポスターや広告デザインの仕事に携わる。

1927年

29歳

ブリュッセルにて初めての個展。
パリ郊外のル・ペルー=シュル=マルヌに転居。パリのシュルレアリストらと交流を持つ。

1929年

31歳

「言葉とイメージ」と題した絵入りのテクストを雑誌『シュルレアリスム革命』に寄稿。

1930年

32歳

パリを離れ、ブリュッセルに戻る。弟ポールとスタジオ・ドンゴという会社を立ち上げ商業美術に携わる。

1938年

40歳

アントワープ王立美術館にて「生命線」と題した自伝的な講演を行う。

1940年

42歳

ドイツ軍侵攻により、ベルギーを離れ南仏のカルカソンヌで3か月を過ごす。

1943年

45歳

印象派の色彩と技法を用いた作品を制作する。「ルノワールの時代」(~1947)。

1948年

50歳

パリでの初めての個展に際し、「ヴァーシュ(雌牛)」様式の作品を発表。

1954年

56歳

ブリュッセルのパレ・デ・ボザールにて初めての大回顧展を開催。

1965年

67歳

ニューヨーク近代美術館にて大規模な個展を開催。

1967年

69歳

ブリュッセルの自宅にて没する。

展覧会構成

第1章:初期作品 / Early Works(1920−1926)

ブリュッセルの美術学校時代や卒業後に制作された初期作品には、未来派、抽象、キュビスムなど、当時の新しい芸術動向が次々と反映されていくのを見ることができます。また、この頃、生活のために始めた商業デザイナーとしての仕事も、マグリットの芸術形成に大きな影響を与えました。

  • 《水浴の女》

第2章:シュルレアリスム / Surrealism(1926−1930)

マグリットは、ジョルジョ・デ・キリコの作品《愛の歌》(1914)に感銘を受け、シュルレアリスムへと傾倒します。妻ジョルジェットとともにパリへ引っ越し、アンドレ・ブルトンを中心とするパリのシュルレアリストたちのグループに合流したマグリットは、言葉とイメージの関係を主題とする作品を多く生み出しました。

  • 《恋人たち》
  • 《困難な航海》
  • 《一夜の博物館》
  • 《永遠の明証》

第3章:最初の達成 / The First Accomplishment(1930−1939)

ブリュッセルに戻った1930年代、現実にはありえない不条理な情景を描き出すことによって、日常的なイメージのなかに隠された詩的な次元を明らかにするという、マグリット独自の芸術が完成されます。この頃からマグリットは徐々に世界的に名を知られるようになっていきますが、それでもまだ絵画だけで生活を支えることは難しく、商業美術も手がけていました。

  • 《凌辱》
  • 《野の鍵》

第4章:戦時と戦後 / War and Post-War(1939−1950)

マグリットは、直接的に戦争の惨禍を描くことはほとんどありませんでしたが、作風は劇的に変化します。印象派を思わせる、明るく優しい画風の「ルノワールの時代」(1943-47)は、ナチスがもたらす恐怖や暗黒に対するアンチテーゼにほかなりませんでした。続く「ヴァーシュ(雌牛)の時代」(1947-48)は、けばけばしい色彩と粗野な筆致を特徴としますが、この変化には当惑の眼差しが注がれるばかりでした。

  • 《不思議の国のアリス》
  • 《シェヘラザード》

第5章:回帰 / The Return(1950−1967)

50代を迎えたマグリットは、1930年代に確立した自らの様式に回帰することとなります。日常的なモティーフを用いながら、その相互関係をずらしたり反転させたりすることによって、矛盾に満ちた不条理の世界を描出した作品が、次々と生み出されました。何の変哲もない日常にひそむ神秘を現出させるマグリットの絵画は高い評価を得て、晩年には欧米各地で大規模な回顧展が開かれました。

 

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